大舎人部千文(おおとねりべのちぶみ)
霰(あられ)降り鹿島(かしま)の神を祈りつつ皇御軍(すめらみくさ)にわれは来にしを
愛国百人一種には知らない歌がたくさんあります。
これもそのひとつですが、とても好きになりました。
防人召されて九州に出征した千文(ちぶみ)という青年の作です。
「霰降り」は鹿島の枕詞で、霰がパラパラとかしましい(うるさい)という連想から鹿島に結びついたと説明がありました。面白いですね。
この「霰降り」でその後の部分まで、きりっと引きしまっていますね。
接続助詞の「つつ」がありますから、祈願が参詣時の1回きりではなく、ずっと(心の中で)祈願していたという意味でしょうか。
厳しさと強い決意が伝わってきます。
意味:鹿島の神様に武運長久を祈って、私は防人にやって来たのですよ。
これだけの内容です。
しかしこの短い五・七・五・七・七 に当時の普通の青年の気持ちが表れています。
多摩の防人行列
故郷に残した家族を想う別の防人の歌も万葉に多くて、それらはそれらで秀歌です。しかし学校ではそういう防人の歌しか教えてくれませんでした。
さて、皆様は神社で何をお参りされますか。
私は常にまず「国家安泰」を祈ります。もちろん家族のことなどもありますが、その後です。
国をなくせば「家内安全」も「商売繁盛」など諸々もあったものではありません。
[愛国百人一首]の過去記事