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Channel: くにしおもほゆ
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H2Aロケット(11月24日打上げ)29号機は改良型。平成32年度打上げを目指すH3ロケットの実現に大きく近づく

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H2Aロケットの「高度化」がほぼ完成します。
この「高度化」技術は平成32年度打上げを目指す新ロケットである「H3ロケット」に不可欠なもので、一歩前進です。
H3ロケットは、高度化を完成させたH2Aロケット、第一弾を2基のエンジンを束ねたH2Bロケット、打上げまでのコストの省力化で経済性を上げたイプシロン・ロケットの各技術の統合です。

ロケットは地球の自転の力を利用して初速を稼ぐために、その効果が大きい赤道付近から打ち上げるのが効率的です。日本は赤道から遠い位置にあるので、南東に打ち上げます。そのぶん、大きいハンディがあるのです。
そのハンディを技術の力で解消することをメインに、高度化計画としていくつもの技術の取り入れが順次進んできました。
第一段はがむしゃらの力仕事で、あっと言うまに終わります。
第二段こそ、いろいろ工夫が出来るステージで、日本の技術力の見せどころです。

高度化の技術とは
 1.第二段の慣性飛行(燃料を使わない)飛行技術を1時間から6時間に延長。
  その結果、衛星は少しの燃料で目的の位置まで行けます。
  その為には第二段のエンジンを止めたり再点火したりします。
  簡単そうに思えてしまいますが、真空・無重力でタンク中の液体酸素と液体水素
  がそれぞれどうなるかを完全に把握する必要もあり大変な技術です。
  何年も前からスパコンを使って研究してきました。
 2.衛星を分離するのに、これまでは火薬でドカンと切り離してました。
  これを機械式に改めて衛星への衝撃を低減します。(これは次の30号機で)
 3.これまで地上から管制していたのを、ロケット自体に管制する機能を組み込み。
  将来的には地上局のレーダー追跡を廃止してコストを低減します。
イメージ 1
 4.液体水素のタンクに白色塗装して太陽の熱による気化を低減。(26号機で済)
 5.飛行中のエンジンの冷却を、少しづつ冷却材の液体酸素を使うことで、
  その使用料を低減。(24号機でトライし、26号機で済)
 6.飛行中に太陽熱で片側だけが熱くなるのを避けるために機体をゆっくり回転。
  バーベキュー・ロールと称します。
 7.タンク内で気化してしまった水素は無駄なものだったが、これを有効利用。
  液体酸素タンク内で液体酸素が浮かないようにロケットを微小加速します。
 8.バッテリーの容量を倍にし、長距離通信用のアンテナを搭載。

改良型H2A、24日に打ち上げ 衛星の燃料消費を抑え、市場競争力高めて巻き返し

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 長時間飛行できる改良型のH2Aロケットが24日、初めて打ち上げられる。H2Aは海外の主力機と比べ静止衛星の燃料消費が多いのが弱点で、商業打ち上げ市場で苦戦を続けてきた。2段エンジンの工夫などで性能を高め、競争力の向上を目指す。(草下健夫)

種子島の宿命
 改良型H2Aはカナダの衛星運用企業の静止衛星を搭載し、三菱重工業が種子島宇宙センター(鹿児島県)で打ち上げる。顧客からの注文で衛星を軌道に運び、対価を得る商業打ち上げビジネスの一環で、同社が初めて受注した民間の大型衛星を積み込む。
 従来のH2Aは打ち上げの約30分後、高度300キロ付近で2段に搭載した静止衛星を分離。その後、衛星は燃料を使って赤道上空約3万6千キロの静止軌道に自力でたどりついていた。
 これに対し改良型H2Aは約4時間半にわたって飛行を続け、静止軌道のすぐ近くまで衛星を運ぶ。衛星は積み込んだ燃料の多くを運用に使えるため、数年長持ちするようになる。
 改良型が必要になった背景には、北緯30度に位置する種子島の立地問題がある。高緯度の発射場からロケットを打ち上げると、衛星が静止軌道に入る際の角度が大きくなり、加速が必要になって燃料消費が増えてしまう。
 赤道付近の南米ギアナから発射し、商業打ち上げ市場で大きなシェアを握る欧州の大型機アリアン5に比べ、H2Aは宿命的なハンディを負っている。衛星の燃料を増やすと、その分だけ搭載機器を減らさなくてはならず、顧客の要望に十分に応えられない。

2段を設計変更
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発したH2Aは2001年から計28回打ち上げ、失敗は1回だけという世界最高水準の信頼性を誇る。しかし発射場の課題や割高な費用がネックとなり、商業打ち上げ市場では海外勢に大きく水を開けられている。
 JAXAの森有司計画マネージャは「赤道付近での打ち上げを前提に設計され、従来のH2Aでは対応できない衛星が市場に多く出回っている」と話す。これでは受注競争の土俵にすら上がれない。
 衛星の燃料消費をアリアン5並みに抑えようと、JAXAが11年度から開発してきたのが改良型H2Aだ。2段エンジンの着火を従来の2回から3回に増やし、最後の噴射で静止軌道に入る角度が小さくなるように設計した。
 飛行時間の延長によって生じる問題にも対策を講じた。太陽光でロケットの燃料が加熱されて蒸発するのを抑えるため、2段の機体表面を白く塗装して光を反射しやすくした。光が同じ面に当たり続け、機器が過熱して故障するのを防ぐため、飛行中は機体をゆっくり回転させる。
 H2Aに搭載可能な静止衛星は全体のわずか約7%にすぎなかったが、改良により約半数に増えるという。多様な需要に応えるため、従来型は今後も併用する。

重要な“つなぎ役”
 JAXAはH2Aをさらに改良する方針で、飛行中や分離時に衛星に与える衝撃を世界最小水準に抑える取り組みを進める。航法センサーを搭載して位置と速度の情報を機体が把握し、地上のレーダーを不要にするコスト削減策も目指している。
 ただ、これで市場での劣勢をすぐにはね返せるわけではない。ロシアの主力機プロトンは高緯度のカザフスタンから打ち上げる不利な条件を克服するため、上段を工夫し、9時間超に及ぶ飛行によって衛星の燃料消費を抑えている。米国の民間機ファルコン9は近年、低価格を武器に受注を急拡大させている。
 こうした海外勢に本格的に対抗するには、次世代機H3の登場を待つ必要がある。H2A改良チームの川上道生プロジェクトマネージャは「ロケットは使われてこそ意味がある。改良型は一つのステップでしかなく、これで満足するものでは全くない」と話す。
 改良型はH3実現までの“つなぎ”の位置付けとはいえ、H2Aの存在感を高める上で重要な役割を担っている。初打ち上げは国産ロケットの今後を占う重要な局面となりそうだ。


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