【テクノロジー最前線】 スパコン番付でも米中摩擦 CPU禁輸で揺らぐ中国の首位
2018年に世界最速、毎秒18京回の計算速度を目指して米アルゴンヌ国立研究所が開発を進めているスパコン「オーロラ」のイメージ。インテルのCPUが搭載される予定
毎年6月と11月に発表されるスーパーコンピューターの世界ランキング「TOP500」で、2013年6月から1位を守り続けている中国。今月半ばに発表されるランキングで、その座が危ぶまれている。
欧米の複数の報道によると、中国のスパコンが核兵器の開発に関与している可能性があるとして、米商務省がCPU(中央演算処理装置)を納めている米インテルと、GPU(画像処理ユニット)を納めているエヌビディアなどに対し、中国への輸出を禁じた。2位の米国「タイタン」と性能比で2倍の差をつけている天津スパコンセンターの「天河2号」は、アクセラレーター(演算加速装置)をインテルの最新のものに置き換えながらトップを堅持する計画だったが、禁輸によってそれが不可能になった。
元来、コンピューターは軍事と密接
もともとコンピューターは部隊や兵器の効率的配置、ミサイルの弾道計算など軍事研究と密接に関わりながら発展してきた。現在でも、例えば世界3位にあるローレンス・リバモア国立研究所(米)の「セコイア」などは、新兵器開発ではないが、経年劣化した核物質の状態を部分的に確かめるいわゆる「臨界前核実験」とセットで用い、核兵器延命に役立てられている。
原子力爆弾は、プルトニウムやウランを一定の量集め、それを火薬などで急激に圧縮することで「点火」し、連鎖反応を起こさせる。臨界前核実験では、部分的にこれらの核物質を変性させ、その測定結果をもとに、シミュレーションで核分裂の連鎖反応が起きることを確かめる。
一方、TOP500などをまとめる学会では純粋にシミュレーション性能比でスパコンを比較しているのだが、世界では米国の独り勝ちが進み、スパコン製造に当たっては米企業製の半導体なしにはありえない状況になっている。
今年6月のトップ10には、インテル、IBM、AMDなど、日本のスパコン「京」を除いて全て米国設計のCPUが使われている。最近のスパコンでは、グラフィカル処理専用の高速アクセラレーター(GPU)を組み合わせることで低コスト化や省エネ化を図っているが、これもトップ10ではエヌビディアやインテル製が占め、「天河2号」にはインテル製、24位の「天河1A号」にはエヌビディアのGPUが使われている。
これまでもインテルなどは中国の研究機関に輸出する場合は、米商務省に許可を申請しているはずだ。当初は許していたものをなぜ今になって禁止としたのかはさまざまな憶測を呼ぶ。
いよいよ中国は内製か
米エネルギー省(DOE)は、現在の天河2号の3倍を超える処理能力を持つ「オーロラ」をインテル製CPUを用いて2018年、アルゴンヌ国立研究所(イリノイ州)に登場させる計画を進めている。「オーロラが天の川(天河)を超える」というジョークのような話だが、米政府の禁輸措置はこれを確実にするためではという見方も一部にはささやかれている。
計画変更を余儀なくされた中国だが、7月の国際会議で、開発者は独自のアクセラレーター(GPU)を開発して性能向上を図ることを表明している。中国製アクセラレーターは高い性能をみせるのか。さらに、日米など世界が次の目標に設定している「エクサ(100京)級」に向けて中国は「CPU開発」の動きもみせるのか。新たなランキングや方針は、11月15日から米国ニューオーリンズ市で始まる国際スパコン会議「SC15」で明らかになる。(原田成樹)
日本の「京」ですが、ランクが首位になったり、下位になったり。
これは評価尺度によって大きく異なるからです。
単純に速さで評価すれば、1位は中国の「天河2」。2位、3位、5位が米国製で、「京」は4位です。
ソフトを利用して実際に使ってみて、その使い易さでは「京」が1位だそうです。
ここへきて新しい尺度が注目されています。
いかに電気を食わないかを尺度にすると、日本のスパコンが上位を独占しました。
「京」の消費電力は一般家庭2万5千世帯分に相当するんだそうです。
次期スパコンは「京」の100倍の能力を目指しますから、下手すると発電所1基が必要になってしまいます。もちろんそんなのは困りますね。
ところで理研が頑張ってますが、理研のほかにもスパコンをやっている企業・団体があります。日本って本当に凄いですね。
中国が良いCPUを自国で造れるかどうか、今はこのポイントが重要ですね。