理瀬さまのブログ『◆安倍晋三さん「美しい国づくり」・創生「日本」・救国ネット支持◆』より転載させて頂きました。
■甘利さんの代理でTPP交渉の現場に臨むことになった西村内閣府副大臣は、09年の総裁選には安倍さんの支持を得て出馬しているほか、その際退会した町村派にも今や復帰しており、次世代保守派のリーダーとしての足場を固めていると言ってよいでしょう。
西村さんは保守派であると同時に旧通産省出身者らしく経済政策では成長戦略を重視していて、すなわち保守派の中でも安倍保守主義の直系的な後継者と特に位置づけられるはずです。
その岳父の吹田元自治相が安倍さんの祖父の岸元首相の選挙地盤(旧山口2区)を引き継いでいるという系譜も、それを思わせるものだと言ってよいでしょう。
第二次安倍政権では、経産省が、TPP推進や法人減税などの成長戦略、原発維持といった政策を安倍さんと共有、今井、柳瀬、山田各首相秘書官を輩出して政権内で存在感を持っていますが、それは前身の旧通産省を古巣とする西村さんの台頭の追い風になるかもしれません。
政党と官僚の関係については例えば、民主党政権の菅、野田両内閣期に消費増税が俎上に載って関連法が成立したことの背景として、今の生活の党の小沢代表が失脚して非主流派に転落したことで「政治主導」が決定的に後退、政権に対する財務省の影響力が著しく伸張した例がありますが、同じように、経産省が政権への影響力を保持しようと自民党に働きかけるようになることはあり得るのでしょう。
また、茂木経産相は党内第二派閥たる額賀派の総裁候補に今後浮上していくことになると思われますが、大派閥の実力者である茂木さんと、保守派および町村派(最大派閥)の次世代エースである西村さんが、「経産省ルート」によって結びつき、協力していくようになるという展開もあるいは考えられるでしょうか。
その場合、経産相経験者の甘利さんがそれを後見することや、その「経産省ルート」が、安倍さんが再選を目指す15年9月の総裁選で支持勢力となることも期待できるかもしれません。
年末の税制改正で、軽減税率の導入について公明党が強く要求する一方、旧大蔵省出身の野田元自治相が会長の党税調や財務省は税収減を嫌って慎重でしたが、先の特定秘密保護法案審議で関係閣僚だった菅官房長官は、法案に否定的だった公明党が一転、政府方針を支持したことの見返りとして、軽減税率導入を支持しているとされます。
安倍さんも11日に党税調に軽減税率の問題で公明党に配慮することを指示していますが、それらの対応の背景には、安倍さんや菅さんが「小さな政府」志向で消費増税にも積極的でない部分があり、つまり財務省とは一定の距離がある(9日22:02配信の時事通信の記事によると安倍さんは同日夜、セブン&アイHDの鈴木会長などの財界関係者との懇談で「(日本の)財政は…財務省が言うほど悪くない」との認識を示したとされますが、それは端的でしょう)ことが無関係ではないでしょう。
安倍さんが9月の副大臣人事で側近の古川財務副大臣を送り込んだのも、財務省への睨みを強めようとするものだったと言ってよいでしょうか。
民主党から自民党への政権交代によって、財務省の政権に対する影響力は低まったと言えますが、その分発言力を高めたのが経産省であるという構図は指摘できるはずであり、官界でのそのことの政治への影響は少なからずあるのかもしれません。
なお、官界では経産省の他に、杉田官房副長官の出身の警察庁が政権に近いことも指摘できるのでしょう。
■今月26日に発足して1年を迎える第二次安倍政権にとって、安倍さんの総裁再選がかかる15年9月までは、1年9ヵ月。
あと3ヵ月経って年度が明ければ現在の総裁任期の折り返し地点にまで至るのであり、総裁再選戦略は、既に意識され直面しているとすべき課題であるかもしれません。
12年9月の先の総裁選当時、総裁再選を窺った谷垣法相は、しかし出身の古賀派に排撃されて立候補断念に追い込まれていますが、安倍さんの出身の今の町村派は、派内に年齢などの点で他の有力総裁候補が不在であることなどから安倍さんの安定した支持基盤として見込め、また、将来の首相の有力候補ながら安倍さんとの協調を旨としている石破幹事長のグループ(さわらび会と無派閥連絡会)、茂木さんを擁する額賀派、盟友の麻生副総理が率いる麻生派、長州閥の高村副総裁や保守派の有村両院副総会長を輩出している大島派も、協力勢力として期待できるかもしれません。
10日21:25配信の『産経新聞』によると、石破さんは同日夜に約70人が集まったさわらび会の忘年会でも「みんなで来年も安倍政権を支えたい」と挨拶しているように、その路線を徹底しており、石破さんが安倍さんに協力する姿勢は「本物」であると信じてよいのでしょう。
また、年明け以降にいよいよ課題となる「集団的自衛権行使解禁のための憲法解釈変更の閣議決定」などの保守・安保政策推進には、その分野に明るい石破さんの協力は欠かせないものであり、その作業を通じて両者の信頼関係は高まっていくことになるのではないでしょうか。
安倍さんと石破さんは先の総裁選の過程で、決戦投票での2位3位連合を念頭して選挙戦中に領土問題と安全保障をテーマとする合同勉強会を開催していますが、その構図は実に1年以上を経て、具体化することになるのかもしれません。
さて、他の党内勢力では、二階派会長の二階元総務会長が秋の人事で総務会長代行を退任、4日の『朝日新聞』朝刊によると前日3日の党国土強靱化総合調査会の会合で「強靱化の予算の結果が思わしくなければ、どんな結果になるか分からん」と気勢を上げるなど執行部から距離を置き始めているようにも見えますが(安倍さんは会合前の二階さんとの面会では「「熱心な取り組み、ご苦労様でした」と短く応じるのみだった」とのこと)、派内には長州閥の河村選対委員長、保守派の中曽根前参院議員会長や衛藤首相補佐官、TPP推進で安倍さんに協力する西川政調副会長などもおり、二階派が少なくとも結束して安倍さんに敵対するということはあり得ないでしょう。
また、石原派会長の石原さんは、山崎元副総裁から引き継いだ派閥が甘利さんや林選対委員長代理、渡海元文科相、田中環境副大臣などの退会者の続出で弱体化している上に、先の総裁選で推薦人となった額賀派の茂木さんや岸田派会長の岸田外相が閣僚や党役員を歴任して自ら所属派閥独自の首相候補となり得る状況では、先の総裁選のように大派閥を糾合して安倍さんに匹敵する対抗馬に再びなる可能性は低いかもしれません。
同様に派内に根本復興相や塩崎政調会長代理、鈴木元環境相という安倍さんに近い閣僚や党役員を抱える岸田派の岸田さんも、古賀元幹事長が「宏池会政権」実現への期待を隠さないのに反して、安倍さんの総裁再選に向けて多数派工作の流れができれば、岸田派自体は党内第三派閥の勢力ながら、それに対抗することは難しいかと考えられるでしょう。
中国が尖閣諸島上空を含む形で独自に防空識別圏を設定するなどの極東・東太平洋地域の情勢に鑑みて、宏池会に伝統的なハト派・対中融和路線が時代にそぐわず安倍さんの外交政策の対抗軸、あるいは反安倍の口実たり得ないという時代状況も、岸田派が総裁選で独自路線をとりにくくするように影響するはずです。
例えば以上のように見通すことのできるだろう力学に基づく安倍さんの総裁再選戦略という政局的対応は今後、集団的自衛権の行使解禁のための解釈改憲の閣議決定などの保守政策や、アベノミクスによる経済再生・成長戦略などの政策的な取り組みと二正面的に見据えられるべき重要課題であると言わねばならないでしょう。
■ところで、更に長期的に観測するなら、18年9月に安倍さんが二期目の総裁任期を満了して首相を退任した場合の後継の最右翼には、その評価の既に堅い石破さんのほかに、茂木さんもそれに匹敵する存在であるとすべきかもしれません。
額賀派所属で大派閥系である茂木さんは、同じ大派閥の町村、岸田両派の協力を期待できるほか、町村派の次世代リーダー候補の西村さんや、同じ額賀派の新藤総務相などの保守派の一部の支持も見込めるかもしれません。
なお、新藤さんは07年8月に第一次安倍改造内閣で経産副大臣に起用されているほか、12年9月の安倍さんの総裁復帰後には党政調の経産部会長に充てられていて、こちらも経産省との繋がりを見ることができますが、むしろ例えば11年8月に稲田行革担当相や佐藤参院政審副会長とともに領土問題に関して韓国の鬱陵島を視察しようとしたように保守派として強硬的であるとすれば、安倍さんが先の総裁選で町村派とは別の枠組みで出馬に踏み切ったように、額賀派を割って保守派を糾合しようとすることもあるいはあり得るのかもしれません。
さて、大派閥の所属で、かつ政権内で存在感のある経産省を率いる茂木さんが今後いよいよ台頭していくことは必至であり、そうだとすれば、その存在が安倍さんの政権運営上で大きくなっていくのは間違いないでしょう。
安倍さんとは憲法観や安保政策を共有している石破さんは上述の通り安倍さんと協調していくことで、あるいは事実上の禅譲を期待などしつつ次に備えていくかと思われますが、その石破さんと茂木さんの間には額賀派を巡る因縁があります。
すなわち、茂木さんが非世襲・非自民(旧日本新党)で初当選したもののまもなく自民党に合流してからは大派閥に所属して今では額賀派の実力者となっている一方、石破さんは父親の石破二朗元自治相の跡を継いで自民党から初当選した後、小沢氏に従って93年に離党、97年の復党後には派閥にも復帰したものの11年9月に政調会長を退任(後任は茂木さん)した際に鴨下元環境相や小坂元参院幹事長とともに額賀派を退会していて派閥との折り合いは必ずしも良くはないとされており、両者が対照的な道を歩んでいることは指摘できるでしょう。
そうした経緯的に石破さんと茂木さんが合流する可能性は低いとすれば、両実力者の競争を利用することは安倍さんの党操縦の要諦の一つとなっていくかもしれません。
安倍さんの今の総裁任期も年度明けには早くも半分を終えるというなかにおいて、徐々に重要課題として浮上してくるはずの総裁再選戦略として、党内力学や省庁間関係の展望をポスト安倍から中長期的に逆算することは、現在の政権運営を主導するために有意義なものだと言えます。
そしてそれはまた、第二次安倍政権の現在のあり方に影響するものであることも確かでしょう。
(R)
主にYahooブログ外の読者様に紹介します。
理瀬さまはお若いのに政界の知識が凄いです。そして俯瞰して客観的に分析する洞察力をお持ちです。ブログ界広しと言えど、こういうことが出来る人は貴重です。
まだ安倍総理が総裁でも何でもなく、単に一議員として全国を飛び回っていたときも、この行動をずっと伝えておられ、お蔭で私なども早期に安倍支持を打ち出すことが出来ました。
理瀬さまは安倍政権実現の陰の功労者と言って過言ではありません。
(以下、転載記事)
安倍首相の総裁再選のための展望
■8日、臨時国会が閉幕しました。
期間中、最も注目された特定秘密保護法の審議や反対派のデモが紛糾加熱しましたが、それも6日に成立。
安倍首相はそれを「嵐が過ぎ去った感じがした」(時事通信、13.12.7-20:16)と言い表しましたが、まずはお疲れさまでしたと申し上げたいと思います。
甘利経済再生担当相が入院加療を受けることになったのは、とても心配されたことでした。
経産相や政調会長を歴任してきた甘利さんはアベノミクスの司令塔としてTPP交渉の最前線に立ってきた安倍さんの盟友であり、第二次安倍政権には欠かせない存在。
11年6月には12年9月の先の総裁選も見据えて当時所属していた山崎派を中心に勉強会「さいこう日本」を立ち上げるも、総裁選では当時の谷垣執行部の幹事長だった石原環境相が派閥の主流派となり、甘利さんは派閥と一線を画して安倍陣営に参加、その勝利に貢献しました。
すなわち甘利さんは派閥の掌握には成功しなかったものの、盟友の安倍さんの復権とともに政治的地位をかえって高めたことになります。
安倍さんはそんな甘利さんの体調について4日夜に「大丈夫だよ」(時事通信、13.12.4-22:56)と話していますが、12日に行われた手術は無事成功、術後の経過も順調で、予定通り年明けにも公務復帰できそうであるといいます(時事通信、13.12.12-19:19)。
甘利さんの回復をお祈りしたいと思います。
期間中、最も注目された特定秘密保護法の審議や反対派のデモが紛糾加熱しましたが、それも6日に成立。
安倍首相はそれを「嵐が過ぎ去った感じがした」(時事通信、13.12.7-20:16)と言い表しましたが、まずはお疲れさまでしたと申し上げたいと思います。
甘利経済再生担当相が入院加療を受けることになったのは、とても心配されたことでした。
経産相や政調会長を歴任してきた甘利さんはアベノミクスの司令塔としてTPP交渉の最前線に立ってきた安倍さんの盟友であり、第二次安倍政権には欠かせない存在。
11年6月には12年9月の先の総裁選も見据えて当時所属していた山崎派を中心に勉強会「さいこう日本」を立ち上げるも、総裁選では当時の谷垣執行部の幹事長だった石原環境相が派閥の主流派となり、甘利さんは派閥と一線を画して安倍陣営に参加、その勝利に貢献しました。
すなわち甘利さんは派閥の掌握には成功しなかったものの、盟友の安倍さんの復権とともに政治的地位をかえって高めたことになります。
安倍さんはそんな甘利さんの体調について4日夜に「大丈夫だよ」(時事通信、13.12.4-22:56)と話していますが、12日に行われた手術は無事成功、術後の経過も順調で、予定通り年明けにも公務復帰できそうであるといいます(時事通信、13.12.12-19:19)。
甘利さんの回復をお祈りしたいと思います。
■甘利さんの代理でTPP交渉の現場に臨むことになった西村内閣府副大臣は、09年の総裁選には安倍さんの支持を得て出馬しているほか、その際退会した町村派にも今や復帰しており、次世代保守派のリーダーとしての足場を固めていると言ってよいでしょう。
西村さんは保守派であると同時に旧通産省出身者らしく経済政策では成長戦略を重視していて、すなわち保守派の中でも安倍保守主義の直系的な後継者と特に位置づけられるはずです。
その岳父の吹田元自治相が安倍さんの祖父の岸元首相の選挙地盤(旧山口2区)を引き継いでいるという系譜も、それを思わせるものだと言ってよいでしょう。
第二次安倍政権では、経産省が、TPP推進や法人減税などの成長戦略、原発維持といった政策を安倍さんと共有、今井、柳瀬、山田各首相秘書官を輩出して政権内で存在感を持っていますが、それは前身の旧通産省を古巣とする西村さんの台頭の追い風になるかもしれません。
政党と官僚の関係については例えば、民主党政権の菅、野田両内閣期に消費増税が俎上に載って関連法が成立したことの背景として、今の生活の党の小沢代表が失脚して非主流派に転落したことで「政治主導」が決定的に後退、政権に対する財務省の影響力が著しく伸張した例がありますが、同じように、経産省が政権への影響力を保持しようと自民党に働きかけるようになることはあり得るのでしょう。
また、茂木経産相は党内第二派閥たる額賀派の総裁候補に今後浮上していくことになると思われますが、大派閥の実力者である茂木さんと、保守派および町村派(最大派閥)の次世代エースである西村さんが、「経産省ルート」によって結びつき、協力していくようになるという展開もあるいは考えられるでしょうか。
その場合、経産相経験者の甘利さんがそれを後見することや、その「経産省ルート」が、安倍さんが再選を目指す15年9月の総裁選で支持勢力となることも期待できるかもしれません。
年末の税制改正で、軽減税率の導入について公明党が強く要求する一方、旧大蔵省出身の野田元自治相が会長の党税調や財務省は税収減を嫌って慎重でしたが、先の特定秘密保護法案審議で関係閣僚だった菅官房長官は、法案に否定的だった公明党が一転、政府方針を支持したことの見返りとして、軽減税率導入を支持しているとされます。
安倍さんも11日に党税調に軽減税率の問題で公明党に配慮することを指示していますが、それらの対応の背景には、安倍さんや菅さんが「小さな政府」志向で消費増税にも積極的でない部分があり、つまり財務省とは一定の距離がある(9日22:02配信の時事通信の記事によると安倍さんは同日夜、セブン&アイHDの鈴木会長などの財界関係者との懇談で「(日本の)財政は…財務省が言うほど悪くない」との認識を示したとされますが、それは端的でしょう)ことが無関係ではないでしょう。
安倍さんが9月の副大臣人事で側近の古川財務副大臣を送り込んだのも、財務省への睨みを強めようとするものだったと言ってよいでしょうか。
民主党から自民党への政権交代によって、財務省の政権に対する影響力は低まったと言えますが、その分発言力を高めたのが経産省であるという構図は指摘できるはずであり、官界でのそのことの政治への影響は少なからずあるのかもしれません。
なお、官界では経産省の他に、杉田官房副長官の出身の警察庁が政権に近いことも指摘できるのでしょう。
■今月26日に発足して1年を迎える第二次安倍政権にとって、安倍さんの総裁再選がかかる15年9月までは、1年9ヵ月。
あと3ヵ月経って年度が明ければ現在の総裁任期の折り返し地点にまで至るのであり、総裁再選戦略は、既に意識され直面しているとすべき課題であるかもしれません。
12年9月の先の総裁選当時、総裁再選を窺った谷垣法相は、しかし出身の古賀派に排撃されて立候補断念に追い込まれていますが、安倍さんの出身の今の町村派は、派内に年齢などの点で他の有力総裁候補が不在であることなどから安倍さんの安定した支持基盤として見込め、また、将来の首相の有力候補ながら安倍さんとの協調を旨としている石破幹事長のグループ(さわらび会と無派閥連絡会)、茂木さんを擁する額賀派、盟友の麻生副総理が率いる麻生派、長州閥の高村副総裁や保守派の有村両院副総会長を輩出している大島派も、協力勢力として期待できるかもしれません。
10日21:25配信の『産経新聞』によると、石破さんは同日夜に約70人が集まったさわらび会の忘年会でも「みんなで来年も安倍政権を支えたい」と挨拶しているように、その路線を徹底しており、石破さんが安倍さんに協力する姿勢は「本物」であると信じてよいのでしょう。
また、年明け以降にいよいよ課題となる「集団的自衛権行使解禁のための憲法解釈変更の閣議決定」などの保守・安保政策推進には、その分野に明るい石破さんの協力は欠かせないものであり、その作業を通じて両者の信頼関係は高まっていくことになるのではないでしょうか。
安倍さんと石破さんは先の総裁選の過程で、決戦投票での2位3位連合を念頭して選挙戦中に領土問題と安全保障をテーマとする合同勉強会を開催していますが、その構図は実に1年以上を経て、具体化することになるのかもしれません。
さて、他の党内勢力では、二階派会長の二階元総務会長が秋の人事で総務会長代行を退任、4日の『朝日新聞』朝刊によると前日3日の党国土強靱化総合調査会の会合で「強靱化の予算の結果が思わしくなければ、どんな結果になるか分からん」と気勢を上げるなど執行部から距離を置き始めているようにも見えますが(安倍さんは会合前の二階さんとの面会では「「熱心な取り組み、ご苦労様でした」と短く応じるのみだった」とのこと)、派内には長州閥の河村選対委員長、保守派の中曽根前参院議員会長や衛藤首相補佐官、TPP推進で安倍さんに協力する西川政調副会長などもおり、二階派が少なくとも結束して安倍さんに敵対するということはあり得ないでしょう。
また、石原派会長の石原さんは、山崎元副総裁から引き継いだ派閥が甘利さんや林選対委員長代理、渡海元文科相、田中環境副大臣などの退会者の続出で弱体化している上に、先の総裁選で推薦人となった額賀派の茂木さんや岸田派会長の岸田外相が閣僚や党役員を歴任して自ら所属派閥独自の首相候補となり得る状況では、先の総裁選のように大派閥を糾合して安倍さんに匹敵する対抗馬に再びなる可能性は低いかもしれません。
同様に派内に根本復興相や塩崎政調会長代理、鈴木元環境相という安倍さんに近い閣僚や党役員を抱える岸田派の岸田さんも、古賀元幹事長が「宏池会政権」実現への期待を隠さないのに反して、安倍さんの総裁再選に向けて多数派工作の流れができれば、岸田派自体は党内第三派閥の勢力ながら、それに対抗することは難しいかと考えられるでしょう。
中国が尖閣諸島上空を含む形で独自に防空識別圏を設定するなどの極東・東太平洋地域の情勢に鑑みて、宏池会に伝統的なハト派・対中融和路線が時代にそぐわず安倍さんの外交政策の対抗軸、あるいは反安倍の口実たり得ないという時代状況も、岸田派が総裁選で独自路線をとりにくくするように影響するはずです。
例えば以上のように見通すことのできるだろう力学に基づく安倍さんの総裁再選戦略という政局的対応は今後、集団的自衛権の行使解禁のための解釈改憲の閣議決定などの保守政策や、アベノミクスによる経済再生・成長戦略などの政策的な取り組みと二正面的に見据えられるべき重要課題であると言わねばならないでしょう。
■ところで、更に長期的に観測するなら、18年9月に安倍さんが二期目の総裁任期を満了して首相を退任した場合の後継の最右翼には、その評価の既に堅い石破さんのほかに、茂木さんもそれに匹敵する存在であるとすべきかもしれません。
額賀派所属で大派閥系である茂木さんは、同じ大派閥の町村、岸田両派の協力を期待できるほか、町村派の次世代リーダー候補の西村さんや、同じ額賀派の新藤総務相などの保守派の一部の支持も見込めるかもしれません。
なお、新藤さんは07年8月に第一次安倍改造内閣で経産副大臣に起用されているほか、12年9月の安倍さんの総裁復帰後には党政調の経産部会長に充てられていて、こちらも経産省との繋がりを見ることができますが、むしろ例えば11年8月に稲田行革担当相や佐藤参院政審副会長とともに領土問題に関して韓国の鬱陵島を視察しようとしたように保守派として強硬的であるとすれば、安倍さんが先の総裁選で町村派とは別の枠組みで出馬に踏み切ったように、額賀派を割って保守派を糾合しようとすることもあるいはあり得るのかもしれません。
さて、大派閥の所属で、かつ政権内で存在感のある経産省を率いる茂木さんが今後いよいよ台頭していくことは必至であり、そうだとすれば、その存在が安倍さんの政権運営上で大きくなっていくのは間違いないでしょう。
安倍さんとは憲法観や安保政策を共有している石破さんは上述の通り安倍さんと協調していくことで、あるいは事実上の禅譲を期待などしつつ次に備えていくかと思われますが、その石破さんと茂木さんの間には額賀派を巡る因縁があります。
すなわち、茂木さんが非世襲・非自民(旧日本新党)で初当選したもののまもなく自民党に合流してからは大派閥に所属して今では額賀派の実力者となっている一方、石破さんは父親の石破二朗元自治相の跡を継いで自民党から初当選した後、小沢氏に従って93年に離党、97年の復党後には派閥にも復帰したものの11年9月に政調会長を退任(後任は茂木さん)した際に鴨下元環境相や小坂元参院幹事長とともに額賀派を退会していて派閥との折り合いは必ずしも良くはないとされており、両者が対照的な道を歩んでいることは指摘できるでしょう。
そうした経緯的に石破さんと茂木さんが合流する可能性は低いとすれば、両実力者の競争を利用することは安倍さんの党操縦の要諦の一つとなっていくかもしれません。
安倍さんの今の総裁任期も年度明けには早くも半分を終えるというなかにおいて、徐々に重要課題として浮上してくるはずの総裁再選戦略として、党内力学や省庁間関係の展望をポスト安倍から中長期的に逆算することは、現在の政権運営を主導するために有意義なものだと言えます。
そしてそれはまた、第二次安倍政権の現在のあり方に影響するものであることも確かでしょう。
(R)