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[書籍案内] [転載] 海馬之推薦図書--ママは何でも知っている/ちいちゃんのかげおくり--

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KABUさまのブログ『松尾光太郎 de 海馬之玄関BLOG』より転載させて頂きました。
 
(以下、転載記事)
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海馬之推薦図書--ママは何でも知っている/ちいちゃんのかげおくり--

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福岡県大牟田市唐船地区に残る大東亜戦争時の敵機迎撃対空砲のトーチカ跡
ブログですからたまには<ブログ>らしい毒にも薬にもならない記事もいいかと。
そう思い、最近のマイブームの書籍を紹介します。といっても、両著ともその筋では、
各々「古典」に属するものらしいので、詳しいあらすじ(?)とかは割愛。
KABUの感想だけを書いておくことにしました。
 
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◆ママは何でも知っている
・作者:ジェイムズ・ヤッフェ(1927年-)
・早川書房(1977年);原作は1952年および1968年に発表。ただし、原作が発表されたアメリカでは単行本にはなっておらず、単行本は日本語版が世界初とのこと。
・内容(早川書房のサイトから転記)
毎週金曜日にブロンクスのママの家で開かれる夕食会は、殺人課刑事のデイビッドにとっては貴重な夜だ。なにしろママときたら、警察を何週間もきりきりまいさせている難事件を、話を聞いただけでいとも簡単に解決してしまうのだから――安楽椅子探偵〈ブロンクスのママ〉登場。表題作ほか七篇の本格ミステリ短篇を収録。
 
・コメント
事件解決の鍵が、ロシアからの亡命ユダヤ人であるママがニューヨークの、低所得者層がそれでも活気に溢れる生活を日暮している日常の<人間>との交流のなかでママが身につけた、人間理解と人間の観察眼であることが、地方の農村の暮らしの中でそれらを身につけたミス・マープル(アガサクリスティー)と通底していること。このことは多くの評者が指定していることにせよ、読む者として(とんでもないところから問題解決の魔法の杖が取り出されるのと違い)フェァーだし、説得力に富むものだと思います。
 
KABUが、しかし、なによりこの「ママは何でも知っている」に引き込まれたのはその(事件や事件解決の証拠や理路とは一応関係の薄い)ディテールのことども。つまり、ママのママが「ロシアでユダヤ人大量虐殺のあったときに、戸棚に4時間隠れて難を逃れた。だから、彼女はどんなときでも動揺するなんてことはない」とか、主人公である息子には「医者か弁護士という専門的かつ知的な職業について欲しい」とママもパパも願っていたとか、ママより3歳年長の同じロシアからの亡命ユダヤ人であるパパはアメリカに来てからもしばらく英語が全然話せなかったとか・・・。そいうディテールがさりげなく、ストーリーに織り込まれているのが素敵でした。
 
これにくらべれば、そういう要素だけを顕微鏡で拡大して読者に見せつけるような作品。例えば、『ソフィーの選択』(1979年)などはためにするあざとい/悪趣味な作品でしかない。と、そう私は考えます。
 
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◆ちいちゃんのかげおくり
・作者:あまん きみこ(1931年-)
・あかね書房(1982年)
・内容(あかね書房+ある読書サークルのサイトから転記)
夏のはじめのある朝、小さな女の子のいのちが、空にきえました。--悲惨な戦争の中に幼い命をとじた女の子の姿を、静かに描く。

戦争のために、ちいちゃんはお父さんを軍隊にとられてしまいます。お父さんが残してくれたのは、「かげおくり」(自分の影を10秒間見つめ、空を見上げると影が目に焼き付いて空に影が映る)という、遊びでした。ちいちゃんは、おにいちゃんと一緒にかげおくりをして遊びます。けれど、空襲のせいでちいちゃんはお母さんとおにいちゃん、どっちとも亡くしてしまいます。小さい子供が、戦禍の中生き残れるはずもなく・・・、ちいちゃんはかげおくりを家族のみんなとしながら昇天してしまうのです。
 
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・コメント
この「ちいちゃんのかげおくり」は小学校低学年の国語の教科書の定番集録作品と言うことで、特に、コメントは不要でしょう。
ただ、上の「ママは何でも知っている」と同じような切り口で書き添えれば、例えば、野坂昭如『火垂るの墓』(1967年)のこれでもかこれでもかと悲しいクライマックスに至る経緯をねちっこく書き連ねた作品に比べれば、「ちいちゃんのかげおくり 」の方が、<戦争>ということ、<家族>ということを読者によりストレートに考えさせることは確かと言える。というか、人間の<実存>ということにストレートに思いを誘う作品、鴨。
 
而して、日教組教師の如く、「ちいちゃんのかげおくり 」を読んだ児童生徒に対して、「だから二度と戦争をしてはいけないのです」などの非論理的な帰結をおしつけるのは論外として、少なくとも、「次に戦争するときには勝たなければならない」「次の戦争の際には、その勝敗は置いておいてもとにかく本土が攻撃を受けないように、最低でも、核武装を日本は急ぐべきだ」、そして、「それでも、戦争の惹起は人智を超えており、かつ、戦の勝敗が時の運だとするならば、ときの為政者は「ちいちゃんのかげおくり」を幾度も反芻しながら戦争に打って出るか否かを熟慮かつ即断して欲しいものだ」とはその読後感として言えるのではないかと思います。
 
ちなみに、KABU家のピグワールドのキャラクター(住人ピグ)に、
「ちいちゃん」がいるのは言うまでもありません。
イメージ 5

 

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