koreyipさまのブログ『koreyasublog』より転載させて頂きました。
(以下、転載記事)
鍛冶俊樹氏の「軍事ジャーナル」(3/9)より転載
鍛冶俊樹の軍事ジャーナル
第179号(3月9日)
*アメリカン・スナイパー
映画「アメリカン・スナイパー」を見た。クリント・イーストウッド監督のこの米映画は「そもそも戦争とは何か?」という根源的な問いから、「現在、米国は中近東でどんな形態の戦争をしているのか?」という時事的な問い掛けにまで幅広く答えようとした秀作である。
ちなみに小生の隣の席でうら若き女性が二人熱心に見入っていた。日本の平和を享受している彼女達に平和は無償ではない事をこの映画は教えていたのだろう。
本誌は映画批評誌ではないから、軍事的な視点に限定する。スナイパーとは狙撃兵を指すが、普通の歩兵とどう違うのか?歩兵銃(ライフルまたは小銃とも呼ばれるが)の射程は約200m、これは敵味方双方の歩兵小隊(20~40人)が200m以内に接近しないと銃撃戦が始まらない事を意味する。
ところが狙撃銃は射程が400m以上である。その分重く大きいので、歩兵が持つには不便だが、歩兵の後方で銃を固定すれば敵小隊の後方で指揮を執る敵小隊長を狙撃できる。射撃訓練で腕を磨けば600m以上の射程を得られる。そうなれば敵小隊長の更に後ろにいる敵中隊長も狙撃の対象になる訳だ。
天才的な狙撃兵になると射程1000m、敵中隊長の更に後方で指揮を執る敵大隊長も狙えることになる。狙撃兵一人のために敵大隊(約600人)が立ち往生する可能性がある。これは大変な脅威であろう。
勿論、敵も同様の狙撃兵を配備している。敵狙撃兵は敵部隊後方の安全な区域にいるから射程200mの味方の歩兵の銃では狙えない。必然的に狙撃兵を狙えるのは狙撃兵ということになり、ときに天才的な狙撃兵が1対1で対決するという、まるで鎌倉時代の一騎討ちみたいな光景が現代戦において現出する。
2001年公開の映画「スターリングラード」はまさに第2次世界大戦での独ソの天才的狙撃兵同士の一騎打ちを描いたものだ。だが「アメリカン・スナイパー」は21世紀においてなお一騎打ちが有り得る事を示している。
イラク・アフガニスタン戦争では無人機を含めてロボットの活躍が話題となった。この映画においても無人機の支援を受けて狙撃兵が活動している場面が描かれている。しかし戦いの主役はあくまで人間であり、決してロボットなどではない。科学技術がどんなに進んでも戦争の本質は変わらないのであろう。
*
明日夜。インターネット放送「原宿テレビ」に出演する。
19時30分から25分間、「イスラム国」や中近東、ウクライナや東アジアまで幅広く語るつもり。なお本番組は公開生放送で番組終了後20:00~21:00交流会がある。会費1500円(ドリンク付き)
東京都渋谷区道玄坂2-16-5セントラル共立ビル8階「渋谷FMスタジオ」
小生も交流会参加予定。著書をお持ちいただければサインします。
詳細は下記参照
軍事ジャーナリスト 鍛冶俊樹(かじとしき)
1957年広島県生まれ、1983年埼玉大学教養学部卒業後、航空自衛隊に幹部候補生として入隊、主に情報通信関係の将校として11年間勤務。1994年文筆活動に転換、翌年、第1回読売論壇新人賞受賞。2011年、メルマ!ガ オブ ザイヤー受賞。2012年、著書「国防の常識」第7章を抜粋した論文「文化防衛と文明の衝突」が第5回「真の近現代史観」懸賞論文に入賞。
著書:
「領土の常識」(角川学芸出版)
「国防の常識」(角川学芸出版)
「戦争の常識」(文春新書)
「エシュロンと情報戦争」(文春新書、絶版)
共著:「総図解よくわかる第二次世界大戦」
監修:
「イラスト図解 戦闘機」
「超図解でよくわかる!現代のミサイル」
インターネット動画配信中:
「現代戦闘機ファイル」
「よくわかる!ミサイル白書」
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