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Channel: くにしおもほゆ
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X線天文衛星のトラブルは突発的な回転が原因と分かった。

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X線天文衛星「ひとみ」については、以前に2度ほど書きました。
順調に軌道に乗り、とても楽しみにしていただけに辛くて残念です。
通信がほとんど途絶えてしまいました。
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私はこのトラブルの第一報を見たとき「「中国のキラー軍事衛星に爆破されたか(怒)!」と、一瞬思いましたが、それなら無数の破片になって飛散している筈。
「近くに別の物体があって衛星と一緒に飛行している」との米国からの情報がありました。さては宇宙空間のデブリと衝突したか!
でもデブリを詳細に観察している米国のその機関は「衝突ではないようだ」と否定的なコメントを出しました。
すると・・一体何が起こったのでしょう。
宇宙空間で衛星の機体が分解するほど異常な力が作用したということになります。

JAXAのサイトでは関連の情報があるたびに誠実に公表していましたが、
すばる望遠鏡による観察まで加えて、あれこれ検討した結果、どうやらトラブルの原因が分かってきたようです。
何んと、衛星が予期しない回転を起こして、遠心力が働いたという見方です。
衛星が回転していないのに機体が「回転している!」と勝手に自己判断してスラスタ(姿勢制御用の小型ロケット)を吹かして回転が起こったようです。


衛星や宇宙機が自己判断能力を持っていることはJAXAの強みなのです。地上局からあまりにも距離があるので、例えば天体に着陸するなどの場合は、いちいち「今ああしろ」「次はこうしろ」と指示を送っていては時差が大きいので巧くいきません。
衛星や宇宙機が自分で状況を判断してタイムリーに行動できるように開発された技術です。今回はこれが裏目に出ました。

いつも書いていますが、NASAは予算規模がJAXAの約10倍です。失敗しても次号機をすぐに作るとか、さほど大きい問題ではありません。しかしJAXAでは簡単には許されません。
宇宙開発ファンの私とても同じです。
衛星はどれも高価なものです。税金を使っている以上はきちんとした対応が当たり前です。
人類として未知や想定不可能なトラブルなんてまず有り得ません。
実はこれまでのJAXAの失敗事例は、「はやぶさ」でも「あかつき」でも事前にきっちりと検証の実験をやっておけば防げたのです。しかし研究予算の枠がそれを可能にしませんでした。

失敗してしまっては仕方ないです・・・。
今となっては、可能なかぎり徹底的に原因を追究して最善を期すしかありません。
かつて「はやぶさ」が満身創痍になりながら奇跡に奇跡を重ねてイトカワからカプセルを持ち帰ったときは、世界に大きな感動を呼びました。
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また金星観測の「あかつき」は金星周回軌道に入るのに失敗して、職人芸の姿勢制御と軌道調整を続けて3年後に再投入に成功しました。
今回も執念を以て奇跡を呼んで欲しいです。
奇跡は神懸かりなものではなく、「ああでもない・こうでもない」の考察と緻密で地味な計算から生まれます。
ただ、現在の状況は、燃料は残存しているものの、機体がクルクル回転していて太陽電池パネルは離脱してしまったと推定されます。
この状況では、さすがに今回は難しいとは思いますが。

イプシロンロケットでは自己判断機能が取り入れられており、さらにH2Aの後継のH3ロケットでは更に進みます。失敗を苦い糧にして、有意義に活かしてほしいです。
X線天文衛星「ひとみ」トラブル 姿勢制御系誤作動で機体が回転

軌道上でトラブルが起きたエックス線天文衛星「ひとみ」について、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は15日、試験観測中の3月26日に衛星の姿勢を変更した後、実際には機体が回転していないにもかかわらず回転していると姿勢制御系が判断して、機体を回転させる誤作動を起こしたことが原因と発表した。
 回転の遠心力で機体からは10個以上の破片が分離。うち2物体については、4月29日と5月10日に大気圏に突入し、燃え尽きると推定している。
 JAXAは誤作動を引き起こした原因がコンピューターの不具合か、人為的なミスかさらに詳しく調べている。太陽電池パネルの半分が残っていれば電源が確保できるなどとして、引き続き復旧に努めている。

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