kat*uo*an*zouniさまのブログ『フローラルのブログ』より転載させて頂きました。
（以下、転載記事）
日本
「日本 」 山村暮鳥
日本 うつくしい国だ
葦（あし）の葉っぱの
朝露がぽたりと
落ちてこぼれてひとしずく
それが
この国となったのだとでも言いたいような日本
大海の上に浮いている
かわいらしい日本
うつくしい日本
小さな国だ
小さいけれど
その強さは
鋼鉄のような精神である
おう日本
ぴちぴちしている魚のような国
勇敢な日本
古い日本
その霧深い中にとじこもって
山鳥の尾のながながしい夢をみていたのも
今はもう昔のことだ
目をあげて
そこに
どんな世界をお前は見たか
日本 日本
お前のことを思うと
この胸がいっぱいになる
お前は希望に輝いている
お前は力に満ち満ちている
そして真剣だ
だが日本よ
お前の道はこれまでのように
もうあんな平坦なものではあるまい
お前は夜昼絶えず
お前の周りに打ち寄せている
その波の音をなんと聞いているか
寂しくないか
おう孤独な
遠い一つの星のような日本
からりと晴れた黎明の天空（そら）のような国
時々は通り雲の
さっとかかるぐらいのことはあっても
お前はまだただの一度でも
その顔面に泥をぬられたことがないんだ
そんな美しい国なんだ
日本
幸福な日本
強い日本
わたしらはここで生まれたんだ
またここで最期の息もひきとって
遠祖（えんそ）らと一緒になるんだ
墳墓（ふんぼ）の地だ
静かな国 日本
小さな国 日本
強くあれ
すこやかであれ
おごるな
日本よ 真実であれ
馬鹿にされるな